Eブロック 第一回
小湊めぐまは、動揺を隠せないほど狼狽していた。
>>Eブロックを調査しろですって?
車は猛スピードで自動運転をしている。道路の舗装はあまり良くないが、ホバークラフトのように、浮き上がって走行しているので、道路の状況によって衝撃を受けることはほとんど無い。
Eブロックの調査を命じられたのは、今年採用3年目で主任に任じられた小湊めぐまと、課長補佐の加手島真である。
小湊めぐまは、小学校はバレーボール部、中高は憧れの先輩が陸上部だったという理由で入部した運動大好きな、大卒で25歳の女性である。一緒に同行する彼女の直属の上司、新人の時からの教育係の加手島真は、35歳。小湊と高校が同じということもあり、先輩後輩の関係でもあるのだが、気の強い小湊めぐまにいつもタジタジな加手島であった。
>>瀬木川課長と山川田くんの連絡が付かなくなってから、2週間・・・表向きは彼らの調査なんだけれども・・・
そう思いながら、操作をしない運転席に座る加手島は、西郷丸局長から、極秘に任務を受けていたことを思い浮かべていた。
局長室に、小湊めぐまと加手島は呼ばれ、瀬木川課長と新人の山川田がEブロックに調査に行ったのはいいが、連絡が付かなくなってから2週間も経ち、埒が明かないので、再度二人の捜索とEブロック調査の命令を受けたのだった。
あまりの急な命令とEブロックという場所が場所なうえに、小湊めぐまは絶望的な顔をしていたうえに、急に吐き気を催したようで、失礼しますと言って局長室を退室していったのであった。
>>大丈夫か?小湊くんは・・・しかし、まぁいい。実は瀬木川君、今回の件は、極秘任務が実はあるのだ・・・これは小湊くんには言わないでくれ。
そういって西郷丸局長が録音した無線の音声を聞かしてくれた。
その声は、新人の山川田の声であった。
>>本部、本部、応答願います・・・誰でもいいです、助けてください。やばいです。
最初は全く聞き取れない声だった。なぜ、ボソボソ喋っているのか?西郷丸局長が音量をアップしてようやく聞き取れた内容だった。
そして次の瞬間。
>>うわあああああああ~うぎゃ~あああああ
その大絶叫のあと、バリバリ、ゴリゴリ、何かに骨ごと食われているような音で無線は途切れていた。
あまりの衝撃にしばしの沈黙が続き。
>>こういう現状だ。二人が生きている可能性は皆無だろう。しかし、彼らの生存が認められない以外、我々は調査しなければならない。警察や軍を使いたいのだが・・・君も知っての通り、警察はAブロックまで、軍はCブロックまでしか、行政権は発動できないことに我が国では国会で決められた。皮肉なことに、海外では軍の行使はできるのに、国内ではCブロックまでしかできない!
そう吐き捨てるように西郷丸局長は言った。
>>仕方がないが、我々、南日本州K県Aブロックの仕事になってしまうのだ。
深呼吸をしながら、西郷丸局長は極秘任務を瀬木川に命令した。